利用者の現実に歩み寄って考えよう
利用者の現実に歩み寄って考えよう
ウェブアクセシビリティ入門 第63号
発行日 :2006年2月27日
- 盲人は
- そんなに特殊じゃ ないんだよ
- 僅かな配慮 ベストアクセシビリティ
皆さんこんにちは。ウェブアクセシビリティ・プランナーの望月優です。
本日は、前号の冒頭で記載した東大阪市消防局のページについての私の考察をお知らせすることにしました。
前号の時点では、まだ考えの整理がついていなかったので、ページを紹介するのみに留めていたのですが、今回は、多くの皆さんからの声を聞いたので、整理がつきました。
このメルマガでは、具体例を交えながら障害者や高齢者にも優しいウェブサイト作りのヒントをお届けしています。
利用者の現実に歩み寄って考えよう
先週、冒頭で
を紹介しました。
実は、その後、このページのことが、アメディアが運営するメーリングリストで話題になりました。
さらに、何人かの方からも個人的にメールを頂き、私の考えが少し整理されてきましたので、今回、改めて取り上げることにしました。
使えるケースと使えないケース
さて、メーリングリストへの投稿や私に届いた個人メール、そして私自身によるテストで興味深いことがわかりました。
まず、私自身のテストでは、次のような結果でした。
ボイスサーフィン:
ページの使い方の説明は合成音で読めましたが、肉声は最初の男性のフレーズしか聞けませんでした。
ただ、「現在のURLをIEで開く」というコマンドでIEを起動させたところ、肉声も聞けました。
ホームページリーダー:
ページの使い方の説明は、アクセス直後の1回だけ聞くことができました。
肉声は、指示どおりに聞くことができました。
ページの説明が最初の1回しか聞けないのは、キー操作が肉声を発生させるためのプログラムに取られてしまい、ホームページリーダーとしての操作ができないからです。
IEをスクリーンリーダー(PC-Talker)で読ませた状態:
ページの使い方の説明と肉声の両方を聞くことができました。
PC-Talker の場合、ページ内部のテキストを読み上げる操作が CTRLキーを押しながら上下のカーソルキーという操作で、消防局の肉声発生のための上下カーソルでの操作とバッティングしていなかったことが結果的によかったのでした。
さて、私の場合には比較的よかったのですが、ホームページリーダーで読めないというメールも届きましたし、 PC-Talker とIEのコンビネーションで読めないというメールも頂きました。
その理由は、どうやら、 Java Runtime がそれらの方々の環境に入っていないことが要因だと考えられるのです。
私も、アクセシビリティを考えるとき、音声ブラウザやスクリーンリーダーの違いについていろいろと考えることがあるのですが、このように、視覚障害者のパソコン環境とは異なる部分、つまり、さらに根本的なパソコン環境の違いで操作が可能か不可能化というケースを体感したのは始めてでした。
なお、東大阪市消防局のページの中で、このようなパソコン環境による違いでうまく操作できないことがあるという記述は見つかりませんでした。
通常のページとどちらがアクセシブル?
さて、東大阪市消防局のもともとのページをご覧ください。
http://www.h-119.jp/
ボイスサーフィンで聞いている限り、とてもアクセシビリティの行き届いたページです。かなり良いです。
つまり、東大阪市消防局のWEB担当者は、アクセシビリティについてそれなりに配慮しているということですね。
このページの中に、
「目の不自由な方のためのホームページを作成しました(1/24更新)」
というリンクがあり、ここから先に進むと問題の肉声ページの説明を読むことができます。
http://www.h-119.jp/renew/yoboukouhouka/talkweb/talkwebsetumei.html
ここに書かれている内容に対する評価が非常に大切なので、このページから引用させて頂きます。
目の不自由な方のためのホームページは、音声読み上げソフトを使用せずに簡単な操作により、知りたい情報を見たり聞いたりできます。
また、文字サイズもブラウザに依存することなく変更することができます。
サイトに入れば、矢印キーの下向き(↓)で「操作方法」を選択し、右向き矢印キー(→)で操作方法の説明を先に確認してください。
さて、この文書を書いたひとは、どんな人を「目の不自由な方」として想定しているのでしょうか。
もちろん、弱視の方の中には、音声ブラウザやスクリーンリーダーを使わずにパソコンを利用している人もいます。
しかし、全盲や強度弱視の人の場合には、間違いなく音声ブラウザやスクリーンリーダーなどの音声読み上げソフトを利用しています。
「目の不自由な方のための」と自称しているこのページにたどり着くために音声環境が必要だからです。
ということは、「音声読み上げソフトを使用せずに」と歌っていること自体にどのような意味があるのかということを振り返らなければなりません。
読み上げソフトを使わずに、あるいはその読み上げソフトの機能をブロックした形で肉声が聞けるということにアクセシビリティ的な意義があるのかどうかということです。
その上に、このジャバアプレットは、特定の Runtime モジュールというパソコン環境そのものに特別な環境を求めているのです。
「アクセシビリティ」とは、「アクセスできる可能性」です。
このジャバアプレットのページは、通常のHTMLぺーじよりもアクセスできる可能性を狭めています。
もしも東大阪市消防局のWEB担当者がこれでアクセシビリティが実現したと考えているのでしたら、それは思い違いですよとお伝えしたいです。
フォーカスをどうやって移動するの?
さらに、ターゲットのページに移動すると、
本システムはJavaアプレットを利用していますので, キー操作を受け付けない場合はアプレットにフォーカスを移動してください。
と書かれています。マウス操作のできない、キー操作だけの視覚障害者がどうやってフォーカスを移動できるのでしょうか?
私も、複数のアプリケーションを起動しているときのフォーカス切り替え操作であるALT+TAB を試して見ましたが、ジャバアプレット自体のフォーカスを捕まえることもできないし、そこから抜け出すこともできませんでした。
ここは、以下のように記述すべきでしょう。
本システムはJavaアプレットを利用していますので,音声ブラウザを利用している場合には、ブラウザのキー操作ができなくなることがあります。
ウェブアクセシビリティは、利用者の現実に歩み寄って考えること、できることなら利用者と同じ位置に立って考えることだという本質を忘れてはいけませんね。
肉声の利用についての私の考え
この肉声ページは、システムとしてはなかなか面白いと思います。
大阪工業大学情報科学部音声環境研究室で開発されたと男の人がしゃべっておりました。
ですから、これを設置するのは一つの魅力あるコンテンツを提供するというスタンスではOKです。
ただ、そのときに、「視覚障害者のため」という文言は外して欲しいのです。
このような肉声による案内は、聴覚に障害のある方以外はどなたでも利用できます。
ですから、これを設置するのなら、一般のコンテンツという位置付けをすべきなのです。
もしも一般のコンテンツという位置付けならば、特定の音声ブラウザの操作とキー操作がバッティングしていても、視覚障害者も仕方がないなと納得するでしょう。
やりたいことを実現するのに、障害者やアクセシビリティを錦の御旗にするのは止めましょう。
ウェブアクセシビリティセミナー案内
アメディア主催の第3回ウェブアクセシビリティセミナーを4月29日の土曜日の午後、中野サンプラザで行います。
http://www.amedia.co.jp/melmaga/webaccess/seminar3.htm
今回は、「バリアフリーサイト作りの基本と実践」というタイトルで、ウェブアクセシビリティの基本と効率的な実践方法を学びます。
ウェブアクセシビリティの基本は、なるべく多くの人にアクセスしていただくように作ることです。
そのためには、シンプルであることとプライオリティの高い配慮点に集注することが大切です。
手の込んだことをすればするほど、アクセシビリティは落ちていくのです。
今号で紹介したページがその典型です。
このあたりのことを詳しく学びたい方は、ぜひこのセミナーにいらしてください。
編集後記
毎月第3木曜日のよるに行われている CSS NITE というセミナーで本誌で過去に取り上げた話題を利用して頂きました。
その主催者にまとめていただいた本誌のバックナンバー掲載の alt 属性に関するレポートを以下からダウンロードできます。
http://www.cssnite.jp/vol05/post_104.html
■ウェブアクセシビリティは、どんな方にも読み易いサイト作りの心配りです
ウェブアクセシビリティのコンサルティングや講演を承ります。
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本誌は、ウェブサイト作りに取り組む皆様とその構築に責任を持つ方々が皆障害者や高齢者の存在に配慮したサイト作りに励んで頂くことを願って発行しています。
ウェブアクセシビリティの分野はまだ注目され始めたばかり、その具体的なノウハウの定番はまだほとんどないと言っても過言ではありません。
インターネット技術は常に進歩、変化しつつあります。その点からみると、いくら追求しても「定番」の確立はありえないのかも知れません。
本誌では、全盲の望月優が現在までに紹介されているノウハウと自らの考察による新しいノウハウを、全身全霊を込めて説明・紹介して行きます。
ウェブアクセシビリティに関して秘密にするノウハウは一切ありません。全てのサイトがアクセシブルになって欲しいからです。
私の誤解や知識不足から、誤った説明や不適切な提案をしてしまうことがあるかも知れません。それに気がついたときには速やかに訂正致します。
ですから、読者の皆様からの指摘や提案が非常に大きな手助けとなります。
このメルマガを通して、ゆるやかな「ウェブアクセシビリティ大連合」が形成されていくことを念じて、発行を続けて参ります。
セミナー、講演の依頼は下記ページよりご遠慮なく
本誌では、
「JIS X 8341-3 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス- 第3 部:ウェブコンテンツ」
をしばしば引用させて頂いております。
必要な方は、下記サイトからお求めください。
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