Ask them first.
Ask them first.
ウェブアクセシビリティ入門 第67号
発行日 :2006年3月27日
- 見てみれば
- あなたの常識 非常識
- 立ち会って判る ユーザー評価
皆さんこんにちは。ウェブアクセシビリティ・プランナーの望月優です。
先週、視覚障害者のネットショッピングの現状の便利さ・不便さを研究する目的で、「アメディアストア」を立ち上げました。
楽天は比較的購入しやすいですね。
と言っても、楽天はウェブアクセシビリティ的には決して優れているとはいえません。
アマゾンをはじめ、ほかのところがあまりにも複雑で使いにくいので、比較すれば楽天はまあまあ使いやすいかなと感じたのでした。
このメルマガでは、具体例を交えながら障害者や高齢者にも優しいウェブサイト作りのヒントをお届けしています。
Ask them first.
3月9日の総務省主催のウェブアクセシビリティセミナー報告の最終回です。
このセミナーで、一つ心にどしんと落ち着いた言葉があります。
それは、
Ask them first.
ウェブアクセシビリティの実現を試みているとき、「迷ったら当事者に聞け」という意味だそうです。
その意味では、私も "one of them" です。
でも、私一人では、その "one" に過ぎないことも事実です。
この言葉、総務省の公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会の委員、関根千佳さんの発言だそうです。
最近彼女とちょっとご無沙汰ぎみです。
関根千佳さんの会社、
さて、セミナーでは、上記研究会のメンバーのお一人の梅垣 正宏さんが、
「ユーザと環境から学ぶアクセシビリティ」と題する講演を行い、この中で、ユーザー評価をどのように評価するかという、とても大切な話をしてくれました。
そのお話の中から、私の気付きを以下に書きます。
ユーザビリティとアクセシビリティ
ユーザビリティとアクセシビリティはしばしば対立する概念のように誤解されてしまうことがあります。
ユーザビリティ=普通の人が使い易いかどうか。
アクセシビリティ=障害者や高齢者がアクセスできるかどうか。
↑この考え方は誤解です。
梅垣さんは、この関係を以下のようにすっきりと整理してくれました。
使えない→使える→使いやすい→使いたい
これを、言葉で具体的に表現すると、
- ウェブアクセシビリティができていないページは「使えない」、できているページは「使える」
- ユーザビリティが良いページは「使い易い」
- ページが使いやすければ「使いたい」(集客成功)
という図式です。
最後の(集客成功)は、私がかってにつけたフレーズです。公共団体はそういう下世話な表現はしませんね。
この図式からも判るように、一般の人達は「使える」というところから始まるのに対して、障害者や高齢者は「使えない」というところから始まります。
つまり、途中から合流するのです。
もちろん、ユーザビリティはページ閲覧者のタイプによって異なる点があります。全ての人にとってパーフェクトなユーザビリティというものがありえるのかどうか、私には判りません。
ただ、流れとしては、「使える」段階からは、なるべく多くの人にとって「使い易い」を目指すべきでしょう。
もちろん、ビジネスサイトでは、そのビジネスのターゲットとなるお客様にとって「使い易い」を目指せばよいのですが、公共サイトの場合には、そうはいきません。
ここに、公共サイトがウェブアクセシビリティにおいて、一歩先んじねばならない理由を見出せます。
ユーザと環境を理解する
次に、利用者と環境を理解することが大切です。
障害や加齢の特性を知り、多様性を理解することです。
さらに、障害者のネットアクセスの方法やクセを知ることも大切です。
できることなら、一人一人を知ることにより、その総体として全体を理解することです。
これが体感的に理解した状態です。
文献で障害特性を読んだだけでは、アクセシビリティやバリアフリーについての気付きが得られないのです(これは、三鷹市広報課の今野さんのお話からの解釈)。
ユーザー評価の有用性
障害者・高齢者による評価は、新たな発見があり、非常に大切です。
操作を見てわかること、設定したタスク以外のことでも現場にいてわかることが非常に多いのです。
同研究会の実証実験のメンバーは、
「今後は基準の中にユーザ評価というステップを必ず加えていこうと考えている。」
と発言しているそうです。
ユーザー評価の限界
しかし、ユーザー評価は万能ではありません。ユーザーの声を「天の声」のように思ってはいけません。
例えば、アクセスできないページをユーザーに提示して、何か改善点はありますか、と聞いても何も出てきません。「読めない」という声だけです。
私、望月にフラッシュのみのページを提示しても、私は「読めませんでした」としか答えようがありません。私が評価できるのは、少なくとも HTML の枠組みがそれなりにしっかりしているページだけです。
また、同じ障害特性でも、その人なりの使い方、使い癖のようなものがあります。ですから、一人の人の意見だけを聞いてそれだけを信じ込んでもいけません。一つの指摘と捉えるべきです。
このようにユーザー評価にも限界があります。
ユーザーの立ち位置に歩み寄ろう
それでは、どのようにすれば良いのかですね。
ユーザー評価は行うべきです。
そこから見えてくる気付きがたくさんあるはずです。
一方、ユーザーにはわからない不具合もあります。
実は、それらも、ユーザー評価を実際に目の当たりにすることにより、サイト制作者自身が気付きます。
ですから、ユーザー評価は、評価結果のレポートを読むだけでは不十分です。
本人が利用している現場を直接見聞すべきです。
私も、本誌でときどき「診断号」を出しています。
なるべく、読者の皆さんに本当に大切な評価ポイントを知っていただきたいと思い、重点項目についてのみ詳しく書いています。
この私の診断レポートを読んでいる皆さんは、私を一応この分野の専門家の一人として理解して、専門家の発言として捉えてくださっていることと思います。ありがとうございます。
でも、もしも皆さんが私が実際にそのサイトにアクセスしている現場を見たとしたら、またぜんぜん違う印象を得ることでしょう。
このように、現場に立ち会うこと、障害者本人の気持ちになるべく歩み寄って考えること、このようなスタンスから妥当な解決策が生み出されてくるのだと思います。
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本誌は、ウェブサイト作りに取り組む皆様とその構築に責任を持つ方々が皆障害者や高齢者の存在に配慮したサイト作りに励んで頂くことを願って発行しています。
ウェブアクセシビリティの分野はまだ注目され始めたばかり、その具体的なノウハウの定番はまだほとんどないと言っても過言ではありません。
インターネット技術は常に進歩、変化しつつあります。その点からみると、いくら追求しても「定番」の確立はありえないのかも知れません。
本誌では、全盲の望月優が現在までに紹介されているノウハウと自らの考察による新しいノウハウを、全身全霊を込めて説明・紹介して行きます。
ウェブアクセシビリティに関して秘密にするノウハウは一切ありません。全てのサイトがアクセシブルになって欲しいからです。
私の誤解や知識不足から、誤った説明や不適切な提案をしてしまうことがあるかも知れません。それに気がついたときには速やかに訂正致します。
ですから、読者の皆様からの指摘や提案が非常に大きな手助けとなります。
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